GPIFと日銀を合わせた公的マネーが、ETFの購入を通して、東証一部上場企業の4社に1社の実質的な筆頭株主になっているとのこと。まぁ、それはそうでしょう、あれだけ買っていれば。東証一部全体の7%強、約40兆円のETFや個別株をGPIFと日銀は保有しています。

潜在的な問題点は二点あって、ひとつは公的マネーの投資はパッシブな投資、要はモノを云わない株主なので、上場企業の経営に対する牽制、コーポレートガバナンスがうまく機能しないのではないか、との指摘です。これは確かに問題ですが、実はこれは公的マネーの問題以前に、インデックス投資が増えていることに潜む問題であり、日本に限らず世界的な問題です。アメリカは公的マネーによる株式購入はないと云いますが、日本以上にインデックス投資化は進んでおり、この問題をどう解決していくのかは、中々興味の尽きないところです。

もうひとつの潜在的問題は、出口はどうするのか?と云う指摘です。買ったら最後は売らねばならない。買う過程でマーケットが下支えされたなら、売る過程ではマーケットは大きく下落するのではないか?そのような、至極真っ当な心配です。私はしかし、本件には出口があると考えています。日銀が買い続けたETFも全て最後はGPIFに売って、GPIFは自分で買って来た株と合わせて巨大な日本株ETFを組成し、持ち、その上で年金支給を現金ではなく、ETF、要は日本の上場会社の株式が満遍なく入った福袋のような形で支給をすれば良い、し始めるのではないか、少なくとも検討をするのではないか、と考えるのです。国民による現引きですね。

そんなことが許されるのか。法律改正すれば出来るかも知れません。かつて英国サッチャー首相は、資本主義発祥の地英国においても、放っておくと資本主義は国民に忘れられてしまうのだと云い、国営電話会社の民営化の際に、電話代の請求書に、当該会社の株式購入申込書を付けたと云います。実物の写真を見たことないのですが、人づてに聞いた話では、請求書と買付申込書が一枚の紙でキリトリ線で繋がっていて、電話代を払う時に"ついでに"民営化株式を買えたそうです。そうやって、案外無理矢理に、国民に株式を持たせ、資本主義・資本市場の効能や、監視しなければいけないということを、忘れさせないようにしたのです。

これは、日本でも、あるかも知れないと私は思うのです。いずれにしろ公的マネーがインデックス化された日本の上場企業株式を大量に保有していることの意味や課題は、我々国民がちゃんと考えていかねばならないことだと思います。