遂に長期国債金利がマイナスを付けました。2016年2月9日は、日本の資本市場の歴史に残る日となるでしょう。既に持っているポジション、ポートフォリオには様々な影響があるでしょう。身を切るような思いの状況もあるでしょう。しかしそれでも尚、この歴史的な現場にいる我々としては、やはりマーケットを楽しむように努力して、マーケットから目を背けるのではなくて、マーケットの中に入ってしっかりと観察し、記憶に留めるべきだと思います。
思い起こせば私が就職した直後、それは29年前の事ですが、時の指標銘柄89回債は、公定歩合に異常接近したのでした。1987年5月14日、クーポン5.1%の10年債89回債は、当時の公定歩合2.5%に接近しました。証券会社間で国債を売買する日本相互証券の端末上の板で、2.555%に3000億円、更に2.550%に2000億円の売りが並んでいたところ、一瞬にしてそれが全て買われました。買ったのは、「公定歩合が高すぎる」と新聞紙上でコメントした最大手証券のディーラーSさんだと云われています。

今日の長期国債@マイナス金利は、「公定歩合が高すぎる」ではなく、差し詰め「0%じゃ金利が高すぎる!」というところでしょうか。異常事態のようにも聞こえますが、日銀がマイナス金利を導入したので、当然の帰結と云えるでしょう。銀行が追加資金を日銀に預けるとマイナス金利になってしまう。であれば0%でも国債を買った方がいい。日銀が大量に国債を買って流動性が落ちているところに、このような連想が働いてトレーダーが国債を買えば、容易に0%を割ってしまう。そんなところでしょう。

既にある当座預金、即ち銀行が日銀に預けているお金、約250兆円には、相変わらず0.1%の金利が付きます。長期国債の金利なんて、我々の日常生活や実体経済には関係ありません。しかしこの騒動と共に、株式市場も為替も大荒れに荒れています。マーケットの動きは資産価値に大きな影響をもたらしますが、ここは今のマーケットに興味を持って、面白いなぁと思いながら、楽しむ気持ちで観察するように心掛けたいと思います。