為替のボラティリティが極端に低いです。ボラティリティとは価格変動率のこと。為替の値動きが以前より小さくなり、歴史的にも随分小さいにも拘わらず、更に小さくなる。そういったことが続いています。この為替のボラティリティが低下し続けるという現象は、何故起きていて、そしてこれからも続くのでしょうか?
為替のマーケットが動く理由はいくつかあります。売買が起きるのでマーケットが動く類型と、実質金利が変わるのでお金の流れが変わり動く類型に先ず分けられます。前者の典型的な例は、各国当局による為替介入です。しかしこれは現代の、各国中央銀行・金融当局が密に連携を取る体制の中では、そう簡単に起きるものではなくなりました。或いは実需による売買。しかしこれはモノが売れる、モノを買わねばならないと云うことは予めかなりスケジュールが分かるので、そしてそれに応じて為替の売買が予定されるので、マーケットの変動要因にはなりにくいものです。或いはスペキュレーションによる売買。これはいつの時にもあります。
大類型後者の実質金利の変化については、典型的な例は中央銀行による短期政策金利の操作ですが、世界中がディスインフレーションで政策金利がほぼゼロである現状、短期金利が動く余地も、動くタイミングも、当面はほとんどない状況です。そしてもう一つは期待インフレ率の変化。これは例えば黒田バズーカの時に大きく変化しました。そして為替も大きく動きました。しかしやはり世界的な、少なくとも先進国においてはディスインフレーションの中、期待インフレ率が変化する幅もかなり限られています。これらの結果、為替マーケットを動かす要因は、スペキュレーションだけがほとんどになってしまい、しかしスペキュレーションは当たるも八卦当たらぬも八卦、買う者居れば売る者が居て、相場観なんて相反するものが交錯して当たり前なので、よほどのことがない限り大きな変動には繋がらないのでしょう。
ではこの状態はいつまで続くのか?金利は下がり続け、リターンは減る。しかし人の欲望は金利が下がるようには下がらない。そこで少ないリターン、狭い利幅を、レバレッジを掛けることによって回数を増やして、欲望を満たすだけのリターンを得るようになる。サブプライム問題の時と全く同じ構造です。そしてそのような状態は不安定なので、どこかでタガが外れる。いわゆるバブルの崩壊です。しかしそれがいつ来るか、どのような規模と形で来るかは誰にも分かりません。上方一点から砂粒を落とし続けて出来る砂山は必ずいつか崩壊しますが、その崩壊のタイミング、規模、形は、何万回実験しても文字通り千差万別であり、均衡状態が崩れるタイミングは、決して予測できないのです。こういう考え方がいずれマーケットの中に拡がってくると、少なくとも期待ボラティリティは上昇してくる筈なのですが、その時はまだ先のような気がします。