月曜日は、久し振りにNRと会いました。NRは、かつて世界中にその名を轟かせた伝説のスーパートレーダーです。彼との付き合いはもう20年近くになりますが、初めて会った時に考え方(相場に対する解釈)が180度反対で、そのことを私がしっかり説明したのがキッカケで、極めて強い信頼関係が築けました。そのキッカケはまだ私が前職にいる時のことですが、結果、前職を辞めること、オンライン証券を創業すること、そして上場すること、マネックスにとってのいくつかの大変重要な場面で、NRは最大の理解者として応援し、そして批評もしてくれ、そして何よりも底なしのサポートを提供してくれたのでした。
NRとは、そういったお互いの真剣勝負の状況以外で話をしても、世間で知るのとは全く違う視点で、しかも深く、世界を見ていて、そして恥ずかしながら私の視点もどちらかと云うとNR系のものなので、二人は話が合います。今回は随分久し振りに会ったのですが、大変喜んで迎え入れてくれて、そしてすぐに世界の話となりました。日本、中国、アメリカ、アフリカ、モザンビーク、コロンビア。国全体の体制や経済の話から、各国内での個別の小さな状況、社会の話から、プライベートに関する話、現代と歴史、文明と文化。これらのネタを、日本、中国、アメリカ、モザンビーク、コロンビアに亘って話しました。もちろん当社の話もしました。とっても楽しかった。いくつかの宿題を抱えて、NRとは別れました。
その晩、私は小学校から付き合いのある某大手新聞社の欧州総局長とこれまた数年ぶりに会って飲みに出掛けました。小学校からというと、名実共にかなり長いです。最近の様々な情勢・出来事に関して、思ったことを全くそのままに話す。ほとんどいとこ同士の会話のようなものでしょうか。いやいとこ同士の方がもう少し制約があるでしょう。色々な話をしたのですが、最後にBCLの話になりました。BCL、御存知ですか?短波ラジオで世界の国が放送する日本語放送を何とかキャッチして、その受信状態を海外の放送局に送ると、あとから受信証明として「ベリカード」と呼ばれるご当地の自然や建物をフィーチャーした絵はがきを送ってきてくれるのです。
小学生高学年の頃、私はこのBCLに嵌っていました。ラジオ・オーストラリア(真南の位置にあるので電波が届きやすい)、VOA(Voice of America 出力が高く発射地点も多いので受信が容易)、ラジオ・モスクワ(確かそう云う名前でした。受信良好)。北京放送(受信良好すぎて他の放送が聞けなくなってしまう)、などなど。他にもフィリピンとか、スリランカとかあったかなぁ。カラフルで、お国柄を良く表したベリカードが、随分と溜まっていました。どうしても聞くことが出来なかったのはエクアドル、キトーからの放送であるアンデスの声。一瞬2秒くらい聞こえた感じがしたことがあるのですが、結局ベリカードを獲得することは出来ませんでした。私がBCLをしていたので、この小学校からの友人もBCLを始めることになりました。二人は中1ぐらいまでBCLをしておりました。
なんであんなのやったんだろうね?やっぱり海外に対する憧れがあったのかね?電波で飛んできたものをキャッチして、それを郵便で知らせて、そしてまた郵便で証明書というか感謝状というか、きれいなカードが送られてくる。小学生とはいえ、そして日本語放送とはいえ、先方の住所とかもちろん英語で書いて、国際郵便の切手代を計って貼って出していたのでしょう。そして反応を待つ。低レベルではありますが、立派な国際コミュニケーションの一歩です。そんな友人も私同様大人になるまで海外旅行をしたことがなく、しかし仕事では海外赴任がとても多いのでした。自分を日本人という出発点から考えるのではなく、世界の中の一個人という図式で捉えることが、今後もっともっと重要になってくると思います。言葉なんてあくまでも後講釈だと思います。ロンドンにいる二人の知己との会話は、自分の座標を再確認するようで気持ちのいいものでした。