●17日からビットコインおよびその他の仮想通貨の価格が急上昇している。特段大きなイベントがあったわけではないが、様々な小さなニュースが複合的に作用していると思われる。
●特に注目されているのが、米GSの新CEOの仮想通貨への前向きな発言や、米コインベースに関する報道など。ただ、情報は錯綜しており、一部には市場操作の可能性を指摘する声もある。
●今週末にはG20財務相・中央銀行総裁会議が開かれる。そこでは、モニターすべき指標等は示されるものの、統一的な規制強化には踏み込まない見通し。規制面では当面これ以上のネガティブニュースは出にくい。一方、様々な噂が先行している感もあり、足元の強い上昇が続くとも考えにくい。
ビットコインが急騰
足元でビットコインおよびその他の仮想通貨の価格が大きく上昇している(図表1)。16日から18日の2日間の上昇率は10%強となった。ビットコインの価格は、6月初頭の韓国コインレールのハッキング事件前の水準に戻している。
最近のポジティブニュース
価格急騰の背景には、何か大きなイベントがあったわけではないことから、市場では、いくつかの複合的な要因が考えられている。第一に、ゴールドマン・サックスのCEO交代である。17日に正式に発表された新CEOのDavid Solomon氏は、先月、仮想通貨サービスを自社の品ぞろえに加える可能性があるとコメントしている。さらなる仮想通貨市場への投資拡大に期待が寄せられている。
また、香港政府が、ブロックチェーンを用いた貿易金融プラットフォームを始動する。HSBCやスタンダードチャータード銀行など21行が参加する見込みで、中国平安保険グループがプログラムを設計した。同社は、中国本土でも同様のプラットフォームを展開していると報じられている。
更に、16日に、世界最大手の資産運用会社ブラックロックが、ビットコインに投資する可能性があると報じられたことも追い風になった。もっともこれについては、その後、ブラックロックのCEOが真っ向から否定している。
また、米国で仮想通貨交換所を運営するコインベースが、証券業者の買収を通じてブローカー・ディーラーとして当局に承認されたという報道も市場を牽引した。しかし、その後、ブルームバーグは、この報道の一部をコインベースのCEOが否定したとしており、事実は確認できていない。
これに対し、著名経済学者のヌリエル・ルービニ氏は、「今回のビットコインの価格上昇は、以前にもみられた価格操作の可能性がある」とツイートしている。
今後の見通し
このように、情報が錯そうしている中で、今週7/21-22にはブエノスアイレスでG20財務相・中央銀行総裁会議が開催される。3月のG20で、7月までに仮想通貨の規制の枠組みを検討するという"宿題"を残しており、今回のG20でその答えが出る予定だ。
既に16日に、金融安定化理事会(FSB)が、規制の枠組みの検討結果をG20向けに提示している。この中で、ウォッチすべき指標のリストが示され、仮想通貨の時価総額や、取引額、価格変動率、ICOの金額、銀行の保有額などがモニターの対象とされている。
但し、FSBは、「現時点では仮想通貨が金融機関に大きな懸念を与えるような状態ではない」として、厳格かつ統一的な規制は示さなかった。これは、規制強化の流れを懸念する市場の安心感につながったようだ。
今後更なる規制は、各国当局の判断にゆだねられる。ICOについては、引き続き不透明な資金調達も多いとみられることから、規制の厳格化の可能性が高いが、市場での仮想通貨取引については、一時期の過熱感も後退していることから、懲罰的な新規制を導入する可能性は低下しているとみられる。
これらの点から、仮想通貨市場は、大きなハッキング事件でもない限り、大きく値を下げる懸念も低い。一方、さまざまな噂が先行している面もあることから、この2日間の勢いが続くとみるのはやや楽観的すぎる。当面は概ね緩やかな上昇基調が続くと考えられよう。
【最近の仮想通貨市場の動きについては、マネックス仮想通貨研究所ウェブサイトをご参照】