今日は若干調整しましたが、日本の株価はこの一ヶ月間、随分と騰げてきました。しかしこの間の売買代金は今一歩パッとしません。金融に限らず全ての経済活動に於いて、売買代金はとても重要な概念です。何故なら、売買とは売り手と買い手がいて、その値段でリスクの移転を行っているのであり、もし売買代金が少ないと、それはリスク判断がきちんとした量を伴って行われていないと云うことであり、その結果としての「値段」と云う現象も、その信憑性が低いと云うことになりかねません。

かつて日本で起きた不動産バブル。ピークを付けた時は、例えば都心部の極小さい土地が恐ろしく高い単価で取引され、その単価を基に日本中の土地の値段を計算しようとしたので(注:同じ単価で計算したと云う意味ではありません)、とんでもないバブルが発生した訳です。そしてそのインフレした不動産担保価値をあてに融資が行われ、大きな不良債権問題が造られました。

流動性を伴わない値段とは、斯くも危険なものです。「流動性のない株は骨董品と同じだ」と云った人がいましたが、今の株価がそうだとは云いませんが、とにかく流動性を上げることは、特に金融市場に於いては、とてもとても重要なことです。流動性自体に価値があるとも云えます。

日本の金融政策・金融行政は、少なくともこの数十年を見る限りでは、流動性を増やすことと逆向き、もしくは冷たいものばかりでした。これは間違っていると、私は強く思います。この問題は市場原理がいい・悪いの問題ではなく、金融市場が存在する限り、流動性は全ての関係者にとって常にプラスの要素であると云うことです。今後、誰が政治・行政をするにしても、この点だけは気をつけてもらいたいと思います。株価を騰げようとしなくてもいいです。流動性を増やそうとして下さい。それだけがマーケットが政治に求めるものだと思います。