大学を出て最初に就職した会社は、ソロモン・ブラザーズと云う、当時「ウォール街の帝王」と呼ばれていた投資銀行でした。今日、このソロモンについて取材を受けて、久し振りに昔のことを思い出しました。

ソロモンは、今ではなくなってしまったブランドで、その真骨頂であったリスク・テイキングの文化・考え方の体系も、その後継となっている会社に必ずしも引き継がれてはいないと思われます。当時(今から20年ほど前)のソロモンのトレーディングやマーケット、リスクについての理解・姿勢は、他を圧倒的に抜きん出た存在だったと思います。恐らく数十年前の日本車とドイツ車のように、走らせれば同じようなスピードは出るが、製品精度の許容範囲が10倍ほど違い、いざと云うときの能力には雲泥の差があった、のと同じような違いがあったのではないでしょうか。

しかし様々な事情の中で、このリスクの殿堂は雲散霧消していきました。ただ私にとっては、資本市場のビジネスをしていく上での、あらゆる基礎理解・方法論は、ソロモンで教わった気が、今でもしています。取材の後に、先日閉会したダボス会議の記事をネット上でパラパラと読んでいたら、ソロモンでのかつての同僚(1級上)のマイケル・ルイスの記事を見かけました。今回のダボス会議については、日本のメディアを読んでいる限りでは、経済・市場に関してはかなり楽観的であったと見受けたのですが、ルイス氏の見方は随分違うものでした。簡単に咀嚼すると、「ダボスに来る連中はみんな心配事やリスクばかり云うが、実際には(債券・株式・為替などの)ポジションもリスクも取っていない。本当にリスクがあると思うなら、そう云うポジションを取ればいいじゃないか。単なる評論でありくだらない。」と云うものでした。リスクに対する観察が、ユニークで、ソロモンらしさを感じさせます。

三つ子の魂百まで、と云うか、最初に勤めた会社のDNAは中々抜けないものですね。