東京もそろそろ梅雨入りしそうです。或いは既に入っているのかも知れません。和歌に出てくる五月雨は、陰暦五月(太陽暦六月)に降る長雨のことで、梅雨と同義です。古今集に於ける春夏秋冬の歌のうち、夏歌は約一割しかないのですが、その殆どが夜更けに一人恋人を想う歌ばかりです。
4年前のつぶやきに、五月雨のことを書いたことがあります。<五月雨>−”(前略)五月雨は田植えのタイミングであり、農耕民族にとっては極めて重要な時期で、その間は田の神を迎えるために物忌みをしました。男女の関係を慎むことは物忌みの代表的な方法であったので、要は恋人に会えないので恋心が募ったようです。(後略)”なるほど。
古今集夏歌に、五月雨を詠んだ歌は二首ありますが、そのうちの一つはこういう歌です。「五月雨に 物思ひをれば 時鳥 夜深く鳴きて いづち行くらむ」(紀友則)−愛おしくて空耳で聞こえた恋人の声をほととぎすの鳴き声に例え、どこへ行くのか→追い掛けて行きたい→会いたい、と云おうとしているのでしょうか。古代は風流な時代だったのですね。