昨日、久し振りに新しいお鮨屋さんを訪ねました。新しく開店したという意味ではなく、昔からいい噂を聞いていたけれども中々機会がなくて行けなかった店に、ようやく顔を出してみたのです。

江東区にあるその店は、銀座の店などとは全く違う佇まいで、住宅地の中にごく普通に存在していました。完全な江戸前の鮨で、生のネタは皆無で、全てのネタに丁寧に仕事がされています。必ずしも高級な食材を使っている訳でもなく、却って期待が募ります。オヤジも愛想が悪いでもなく、かと云って煩くもなく、店の雰囲気も煌びやかではないが小綺麗で、全てに於いて節度の保たれた、好感の持てるお鮨屋さんでした。何事にも、「正しい程度」と云ったものが重要であると思われます。

ひとつ残念だったのは、茹で海老には醤油が塗られ、煮蛤と穴子には同じツメが塗られていたことです。海老、貝、穴子、それぞれにそれぞれで作ったツメを塗る、これを「ともヅメ」と云いますが、実践しているお鮨屋さんを見たことがありません。私は昔食べたことがあるのですが、やはり相性が良く、「適切」な味の拡がりで楽しめます。無い物ねだりをしてもいけないのですが、それ程難しいものとも思えず、何故やらないのでしょうね。