ドル安は続くでしょうか?先週木曜日のつぶやきに書いたように、為替の動きは奥が深く、簡単に分析したり予想できるものではありません。しかし敢えて大胆に考えてみましょう。

木曜日に書いたように、ドル安の背景にあるのは厖大な貿易赤字です。しかしそれは何も最近始まったことではなく、ずっと続いてきたことです。それが急に最近になって、あらゆる場所で「この貿易赤字は維持できない。ドルは大幅に切り下げられるべきだ。」との論調が噴き出してきました。それは不自然であり、その裏に、政治的な隠れた意図があるように思えてなりません。
私はアメリカの貿易赤字は十分維持できる範囲内であり、その結果、ドルは”必然的に”売られることはないと思います。もちろんマーケットですから、思惑の中で一旦は売られることもあるでしょう。しかし長期的に、必然的に、ドルの価値が切り下げられる理由はないと思います。

週末に或る人と話してこのことについてスッキリしたので、ひとつの考え方を御紹介します。アメリカは或る意味で巨大な銀行のようなものです。或る人がお金を持っている時に、必ずしもお金を必要としている隣人に貸すとは限りません。個人は銀行に”預金”という形でお金を貸し、銀行がそのお金を元々の隣人に貸し付けます。銀行がリスクの仲介をしている訳です。あたかも同じように、世界中のお金が安全性を求めてアメリカに流入します。そのお金が”投資”、”リスクマネー”という形で世界各国に再循環します。その結果アメリカは厖大な負債国になり、しかし一方で巨大な資産家となっています。
もうひとつの見方をしてみましょう。アメリカの国富は約52兆ドルです(名目64兆ドルで、負債12兆ドルを差し引いた数です)。そしてこの資産が、毎年安定的に約3兆ドル増え続けています。そして毎年の貿易赤字が約0.8兆ドル。そういう全体図でみると、それがいいかどうかは別として、維持できない水準ではありません。会社に例えると、純資産520億円の会社が毎年その純資産を30億円増やしており、その会社が毎年借金を8億円増やしている。そんな会社をどう思いますか?少なくとも破綻が近いとか、その会社の株は大幅に売られるべきだとか、そういう話にはならないでしょう。

ですからドルは一時的な思惑の中で、或いは新FRB議長に対する信認が定まらない中で、場合によっては大きく変動することがあるでしょう。しかし必然的にドル安になるとは思いません。お金の流れは、やはり裏には裏がある。慎重に見ていく必要があると思います。