欧州へのIR(インベスター・リレーションシップ)、即ち機関投資家訪問の旅を終えて東京に帰ってきました。IRと云うと、一般には「株を買ってもらうための宣伝」と思われがちです。会社の状況、今後の展望などを説明するのですが、一種の営業活動のようなものだと云う訳です。

しかしIRの最大の効用は、自社の営業ではなく、様々な一流機関投資家と経営方針などについて意見を交わせることだと思います。彼らは一流の論客である場合が多いので、議論の中で現在の経営方針について確信を深めたり、再考を意識させられたりします。

更に重要と思われるのは、「株主」と云うステークホルダーの視点・意見を強くダイレクトに受けられることです。会社には様々なステークホルダーが存在します。お客様、株主、社会、そして社員。それぞれの視点・指向は、必ずしも一致しません。抽象的・長期的には同期すべきものだと思うのですが、具体的・短期的には色々な見方があります。お客様や社員の声は日々伝わってきます。株主の声は、株価を通して、或いは様々な形で当社にも寄せられるので注意して耳を傾けていますが、やはり先の二者に比べると間接的になりがちです。

今回の旅では5ヶ国6都市27投資家と会いました。サシで議論した上での彼らの直接の声は、株主の声のひとつの代表だと云えるでしょう。上場企業である以上、複数のステークホルダーの要請を昇華してまとめていく努力が必要です。そういう当然のことを再認識できたIRトリップでした。