郵貯民営化のもっとも重要な目的・効用は何でしょうか。私はかつて、郵貯の問題は「大きい」ことであって、公であることではないと思っていました。あまりに大きな資金が郵貯を通して集められ、それを少数の人が使い方を決めている。あまりにも大きな額のお金を使おう・運用しようとすると、勢い判断や実行が甘く粗雑になり、結果として効率的な資金環流が行われない。これが郵貯の最大の問題だと、「かつては」思っていました。

しかし最近は違う観点を持つに至りました。郵貯の最大の問題は、有能な人材を埋没させていることではないでしょうか?地方の大学を出た地元の優秀な学生の多くが、県庁や郵便局を就職先の第一志望としていると聞きます。勿論公共のサービスを提供することは、とても意義深いものであり、立派な、尊敬されるべき職業の一つです。しかし必ずしも「生産的」ではありません。安定と高給が、多くの才能を生産セクターから奪っているのではないでしょうか。その数たるや厖大で、それだけのハンデを負いながら、これだけのGDPを生む日本はやはり凄い国だと思います。

しかしこのハンデを取り除き、多くの才能をリリースしたらこの国はどうなるでしょう。国家公務員の中の最大勢力である郵便局員を民間サラリーマンにすることの波及効果は、計り知れないものがあります。一般的に考えると、給与水準が減り、多くの優秀な人材が、他の職業に移動し始めるでしょう。これはセンシティブな問題ですが、これこそが郵貯民営化の主眼であり、その結果日本経済が次のジャンプをできるようにすることが、国民経済・生活への最大のメリットではないでしょうか?全体の利益と個々の利益には常にコンフリクトが発生します。しかし国政に於いては、きちんと全体の利益が議論されて欲しいと思います。