昨日のつぶやきで、紀友則の

『色も香も おなじ昔に さくらめど 年ふる人ぞ あらたまりける』

という歌を引用しましたが、和歌でも漢詩でも、「変化するのは人間で、花などの自然は変わりがない」というコンセプトに絡めて歌が作られることが多いと思います。

人の無常さは、古今東西、様々な文学作品のテーマでした。一方、平安時代随一の色男にして文化人の在原業平は、全く逆の観点で自然と人を歌いました。
『月やあらぬ 春や昔の春ならぬ わが身ひとつは もとの身にして』
(古今集恋歌五)

この歌の解釈はいくつもあって定まっていないようですが、普通に読むと「月も春も、昔の(貴女がいた時の)月や春とは違う。なのに自分だけは何も変わっていない。」という意味でしょう。微妙な恋心と未練を、何とも心憎く歌っています。業平はやはり、日本文学界の天才中の天才でしょうか。

伊勢物語のようなテイストは、最近は忘れられがちですが、日本の伝統的な、そして素晴らしい文化として、きちんと残していきたいものです。