先週の中国株ですが、上海総合指数と深セン総合指数は続伸、創業板指数は反発、香港ハンセン指数は続落となりました。今週の上海総合指数は米国の大統領選挙の影響を受けて推移しました。7日(月)はクリントン候補の私用メール問題で米連邦捜査局(FBI)が追訴しないとの判断をしたことがトランプリスクの後退に繋がり、世界的なリスクオンの流れが戻る中で原油価格が上昇。その影響から石油株や資源株が上昇して相場を牽引しました。8日(火)も「深港通」のテストが堅調に進み、月内にも稼働を開始するのではないかとの期待感が株価を引き上げて続伸となりました。

なお、8日(火)は10月の中国の貿易統計が発表されています。人民元ベースでは輸出は3.2%減<市場予想0.8%減、9月実績5.6%減>、輸入は3.2%増<市場予想5.0%増、9月実績2.2%増>との結果です。市場予想を下回りましたが、9月の実績は上回ったと言うことで、大きな材料にはなりませんでした(ちなみによく報道されるのは米ドルベースの数字であり、人民元の切り下げ分が加味されているため、ここに記載した数値よりも下げ幅が大きくなっています)。

9日(水)は米国の大統領選挙でトランプ氏の優勢が伝えられたことで、世界の金融市場はドル安・株安で反応し、中国本土株も全般的に軟調な動きになりました(ただし一時的な急落からは戻す)。しかし、10日(木)は前日夜の米国株が大幅続伸となったことを受けて上海総合指数も反発となり、年初来高値更新。さらに11日(金)も大幅続伸となりました。セクター別にはインフラ関連や、鉄鋼、非鉄金属が急騰となっています。これは、トランプ新大統領が大規模インフラ投資を行うとしていることが要因です。また、トランプ氏は保護貿易主義で中国からの輸入品が労働者の仕事を奪っているとして、中国製品に関税をかけるなどの発言をしていたため、当初、トランプ当選は中国本土株にマイナスとみられていたわけですが、大統領選挙後の会見内容が非常に穏やかな内容であったことからその懸念が後退したことも中国本土株にはプラスでした。結局上海総合指数は前週末比で2.3%の上昇となっています。

一方、香港ハンセン指数は軟調な値動きとなっています。週の半ばまでの動きは上海総合指数と同様の動きとなりましたが、11月11日(金)の香港株は反落となり、香港ハンセン指数は週間で前週末比0.5%の下落となっています。週末に反落した理由については米国への資金流出を懸念してのものです。まず、米国の長期金利が上昇したことが理由の1つです。トランプ新大統領の大幅減税や大規模インフラ投資といった新政策を行うためには、米国国債の大量発行が必要です。これは債券価格の下落と、長期金利が上昇する要因となります。また、両政策が米国経済の追い風になり、米国経済が拡大すると見られている点も長期金利の上昇に繋がります。さらに米国グローバル企業が海外に留保している利益にトランプ氏はメスを入れるとしており、これが2004年に実施された本国投資法のような形になるのではないかとの予想がドル高を後押ししています。そして米国での長期金利上昇、ドル高、景気加速によって香港を含めた新興国から米国に資金が流出していくことが警戒されている訳です。

11月14日(月)も香港株は続落でスタートしており、香港株については、しばらく米国への資金流出懸念から軟調な展開が続きそうです。この流れが変わるキッカケがあるとすれば、トランプ新大統領の政策期待が高まったあと、債務上限問題などによって、期待ほどの政策が実現できなかった場合になると思いますが、それが明らかになるまでには、もう少し時間がかかるかもしれません。

コラム執筆:戸松信博
(グローバルリンクアドバイザーズ 代表取締役社長)