先週木曜日の朝、私がこよなく愛する鮨屋の親父さんから手紙を貰った。簡潔に箇条書きに書かれた手紙には、店を閉めるということと、後続に対する思いが記されていた。短い文章の中に、悩んだ末であろうがもう変わることのない親父さんの強い意志と、鮨と顧客に対する熱い気持ちが滲み出ていた。私は言葉を失った。不意打ちを食らった私は、仕事をしながらも常に気にしつつ、しかし一日の間なにもアクションを取ることが出来なかった。深い感謝の気持ちと、残念な思いが入り交じりながら、夕方、遂に私は店に親父さんと話したい意を伝えた。親父さんは閉店後、電話をくれた。会話の内容は、とても私の筆致の届くところではない。生涯を一つのことに賭け、その道を究めた人の思いに触れられたことに、私は感動し、ちょっと大人になった気がした。親父さんの生きザマと思いは、私なりに年月を掛けて噛み砕き、そして昇華していきたい。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。