おフダではなく、おサツです。今日の日経新聞の経済教室に、ローレンス・コトリコフ、ボストン大学経済学部長の興味深い小論文が掲載されています。昨日のつぶやきでも書いたように、我が国の財政は破綻、もしくは莫大な負債を若い世代に担がせています。政府は年金給付額の削減や増税を考え、実際にそれらの改革を実行に移し始めていますが、所謂「焼け石に水」の状態であり、加えて高齢者に対する医療給付も急速な厖大を続けていますから、世代間の不均衡は現在でも世界最大ですが今後は更に拡大するであろう、との内容です。筆者はその解決策としてユニークな方法を提案しています。お札を大量に刷ることによって、ハイパーインフレを起こすべきだと言うのです。しかもそのお札で、高齢者の年金請求権を買い取り、一方若い世代に関しては、収入の一部をグローバル・インデックス・ファンドで運用すべし、というものです。最後の解決方法の下りは、高齢者の資産に事実上の徳政令を掛け、若者の資産は国外に逃避させようというものですから、意識的・挑戦的にかなりラジカルな展開をしているように受け取れ、必ずしも賛成ではありませんが、しかしながら私は氏は我が国の抱える問題点を的確に指摘していると思います。我が国の財政は抜き差しならない状態にあります。年金給付カット・増税だけでは到底足りません。国のバランス・シートの資産側は主に土地や出資金などのインフレ資産であり、負債側はインフレの影響を受けない債務ですから、最後はインフレを起こさないと財政問題は解決出来ないという論点に同意します。小泉内閣が間接金融を中心とした体制から、直接金融(即ち株式市場)を中心とした金融システムへの転換を進めようとし、更に個人投資家を国策として増やそうとしていることは、この財政問題とも関係がある筈です。こんなことを言うとまるで証券会社の社長のようですが(実際そうですが・・・)、株価を上げることは、今の我が国の重要な国策の一つであるべきです。そしてそうでしょう。コトリコフ教授の小論文は今日が上編なので、明日の下編にも期待したいと思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。