以前に何度か書きましたが、私は日経新聞の商品面の愛読者です。身近な商品の値動きから世界の動静が見えるだけでなく、どこかその構成や文章に、主力の経済面などと違い自由な香りと創造性を感じます。それはスポーツ面や文化面にも言えることです。最近では文化面の右上、「アート・イン・ポップ」が中々読み応えがあります。椹木野衣(さわらぎ・のい)という美術評論家の方が書かれている、レコード・ジャケットに見る現代美術史のコラムなのですが、専門であるジャケットの解説の文中に、ジャケットの中身の音楽に対する造詣というか愛情が垣間見えます。ディープパープル3、EW&Fの太陽神、クラフトワークの人間解体、オーネット・コールマンのフリージャズ。ジャケットも音楽もサイコーの美味しい作品ばかり紹介しています。私の好きなジャズでは、コールマンに限らず、特に前衛系では素晴らしいデザインのジャケットが多かったのですが、今のCDでは迫力も味もありません。昔のLPの方が視覚上も触感も優れていたと思います。そしてあの匂いも、秘密の扉を開ける匂いのようでいい演出でした。技術革新には、常に得るものと同時に失うものがあるのでしょうが、ジャケット芸術だけは一方的に失ったようで勿体ないと気がします。いずれにしろ、文化面にはこれからも期待していきたいと思います。