今日は思いがけず、かつての師匠に会うことが出来ました。東証の市場運営委員会に出席したのですが、時間ギリギリで焦って着席すると隣には見慣れた名前のMさんが座っておられました。Mさんに会うのは、もしかしたら13年ぶりぐらいかも知れません。一通り先物、オプション、現物債券などのマーケティングやトレーディングをかじったあとに、転職した私はスワップ・デスクを立ち上げて、デリバティブ・ビジネスを構築し始めたのですが、当時は正真正銘の駆け出しで、右も左も分からないことだらけでした。デット・キャピタル・マーケッツ−社債の引受けビジネスにも携わるようになりました。外貨建債券を引き受けると同時にスワップを掛けて、国内企業の円建て資金調達を実現する仕事は、単純なトレーディングに較べて計算が遙かに複雑で、加えて発行体の事情、銀行との関係、社債市場の環境などが有機的に絡み、計算とリスク・テイクだけでも終わらない、奥深く、感情もあり、手強い大人の世界でした。ルーキーの私に、そんな世界にも正しい仕事の進め方があり、駆け引きと誠実さが両立できること、更には仁義までも存在しうることを教えてくれたのは、仕事の相手方であった某銀行のMさんでした。嬉しいことにMさんも私のことを憶えていて下さったようでした。ちょっとした出会いが、仕事の原則や哲学を変えます。いい出会いは大切にしたいですね。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。