昨日発表された出生率はまた下がり、1.29と過去最低になりました。先進国はみんな低い訳ではなく、アメリカは2.01、フランスは1.90、イギリスでも1.63あります。前にも書いたことがありますが、少子化問題は、我が国が抱える、最も重要かつ深刻な問題の一つです。人口が減れば、当然需要は減ります。需要が減れば、当然経済は縮小しますし、デフレにもなります。不良債権問題よりも何よりも、少子化問題こそが、我が国の最重要課題です。ところが一般に政治家は、まだ生まれてない人、そしてその人達が背負う社会についてよりも、今居る人、今の社会について心配し、施策を打とうとします。選挙に勝つためとか、そういった姑息な理由を抜きにしても、やはり人は喫緊の問題と重要な問題を眼前に並べられると、仮にその重要な問題が将来致命的な問題になることであっても、どうしても喫緊の問題を扱ってしまうものです。しかし少なくとも政治家だけはそれではいけないと思います−実際には政治家ほど短期合目的な行動を取りがちですが。金融システムとか不良債権とか、不祥事とか、そんな話はもうそこそこにして、国全体で少子化問題を真剣に見つめる時が来ていると思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。