アートの範囲は何処まででしょうか?昨日或る知人と、そんな話をしました。時代と共に変わっていくものだとは思いますが、一般に最もオーソドックスな認識だと「見る静止物」でしょう。しかし最近では「何かを燃やす瞬間」という類もアートとして認識され得るので、静止物である必要はないでしょう。音楽も立派な芸術ですから、聴くアートもあります。では視覚と聴覚だけがアートの範囲を捉えるかというと、嗅ぐアートとか、肌で体験するアートというのもありそうですから、嗅覚芸術や触覚芸術も、現代では存在するでしょう。そう考えると味覚だけ仲間外れというのも変な話なので、美味しいものは味覚芸術でしょうか?こう考えていくときりがないのですが、私は感じる経路は、五感を問わず、知覚されればアートとなり得るのではないかと思います。小説や詩が、そしてそこから生まれる演劇や映画も立派な芸術と考えられる場合が多いことを鑑みると、アートは五感のいずれかによって限定されるものではない気がします。では恋愛は感覚芸術でしょうか?・・・恐らく違うでしょう。
アートは形態や認識する経路によって範囲が限定されるのではなくて、その普遍性によって自ずと範囲が決まるのではないでしょうか。多数の人が観賞できなければいけない。何度でも観賞できなければいけない。そういった普遍性がアートの要件なのではないでしょうか。そう考えると、その瞬間だけ味わえる料理や、あくまでも個的な恋愛などは、アートとは認められないのでしょう。また思想のあるアートは、普遍性を担保しようとする仕掛けなのかも知れません。私は芸術論を勉強した訳でもないのでデタラメな考えかも知れませんが、そんなことを考えてみました。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。