先週の中国株ですが、上海総合指数は続落、深セン総合指数と創業板指数、香港ハンセン指数は続伸となりました。先週指摘したように、香港ハンセン指数は欧米の株式市場が上昇したことに影響されて上昇したのだと思います。また、深セン総合指数と創業板指数は深センと香港の相互株取引(深港通)への期待感が継続しているところに、香港市場が好調なことが株価を牽引しました。また、原油価格上昇によって資源株が買われたことや、中国が年後半に国営企業改革を加速するという見方が強まったことも先週は株価に対してプラスに働いた模様です。
一方で、軟調な上海総合指数ですが、こちらが株価上昇の波に乗れなかったのは2つの理由があると思います。1つは中国の鉄鋼や非鉄金属の価格が下落していることです。これらの価格は第1四半期に大きく上昇しましたが、中国政府が4月以降に緩和政策を若干引き締め気味にしていることから、現在は調整局面にはいっており、今後一段の下落となるのではないかとの懸念が出ています。このため、鉄鋼株や非鉄金属株が売られました。2つ目の理由は株式の売買停止に関する新規定がすぐにまとまらなければ、中国本土株(A株)のMSCI新興国市場指数への採用決定が遅れる可能性があると大手証券会社が指摘したことです。これにより、同指数への中国本土株(A株)採用期待が後退しました。もちろん、以前から指摘している、中国政府が短期の成長よりも膨らんでいる債務の解消を優先すべきという方針を打ち出していることも、引き続き株価の重しとなっています。
さて、先週は中国の重要経済指標の発表がありませんでしたが、今週は6月1日(水)に5月のCaixin製造業購買担当者景気指数<市場平均予想49.2、4月実績49.4>と中国公式製造業購買担当者景気指数<市場平均予想50.0、4月実績50.1>、中国公式非製造業購買担当者景気指数<4月実績53.5>が、6月3日(金)にCaixinサービス部門購買担当者景気指数<4月実績51.8>がそれぞれ発表される予定です。4月の各実績は市場予想を下回り、世界的にも株価が下がる原因の1つとなっただけに5月の実績が市場予想を超えるのか、それとも下回ってくるのかは大きく注目されるところです。もしも4月同様、市場予想を下回ってくるようですと、世界の株式市場にも悪影響を与える恐れもあり、注意が必要と思います。
コラム執筆:戸松信博
(グローバルリンクアドバイザーズ 代表取締役社長)