先日「新ビジネスマンに勧めたいDVD」というような質問を受けたので、私の仕事観に強い影響を与えている映画として「スミス都へ行く」(1939年)を挙げました。フランク・キャプラ監督、ジェームズ・スチュアート主演という、まぁ私にとっては感動の定番チームによる代表的作品です。小学生か中学生の頃にテレビで初めて見て強い印象を得てから、ずっと心の中に映画のストーリーとイメージを反芻してきました。大学生の頃からビデオを探し始めたのですが、中々見つかりませんでした。やがて市中に出回るようになったのですが、何故か私は一度も借りませんでした。最近はDVDも手に入るようになったので、実際に購入したのですが、封も切らずに閉まってあります。心の中で強い影響を与え続けているこの映画を実際に見て、ずっと大切にしてきた考え方や印象が万が一でも崩れるのが嫌だからです。内心のイメージは、何度も思い出し続けなければ忘れてしまうが故に、却ってその反復と共にイメージが強固になっていくのでしょう。郷ひろみの歌に♪会えない時間が〜愛育てるのさ〜♪というのがあります(安井かずみ作詞)が、言い得て妙です。ただこの間乗った飛行機の中で、キューティ・ブロンド・ハッピーMAXという映画を見ていたら、或る場面の背景にあるテレビの中で「スミス都へ行く」のジェームズ・スチュアートの熱弁場面が映っていたのは、親友にばったり街で遭遇したような、とても懐かしく嬉しい瞬間でした。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。