3年程前にイクラのことを書いたことがありますが、今日はその続編です。御存知の通りイクラは鮭の卵です。鶏とは違って、魚には産卵期がありますから当然イクラにも季節があります。一番おいしいのは今頃から1ヶ月間程だと思います。鮭は産卵する為に遠い外洋から帰ってきて生まれ故郷の川を上り、上流まで生き延びた雌雄が交尾する訳ですが、お腹に卵を持った雌は、河口が近付いてきて「川」の匂いがすると、産卵が近いことを悟り、卵の皮が固くなってくると言います。従っておいしいイクラは、川の匂いがしない沖合で捕まえた鮭の卵でなくてはいけません。しかしそもそも卵を産む為に川に戻ってくる訳ですから、あまり沖合過ぎると卵が小さかったり、皮が柔らかすぎたりします。この微妙な頃合いが、しんこと並んでとても難しい食べ物です。イクラは元々ロシア語【ikra】で魚の卵全般を指す言葉のようですが、どうして我々のあの「イクラ」が【ikra】からイクラと呼ばれるようになったかは分かりません。一方イワシ(鰯)は日本語ですが、これはロシア語の「イヴァシー」の語源だそうです。択捉島辺りに行けば謎が分かるでしょうか?
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。