タクシーの運転手さんとよく話をします。景気動向を測るのに案外正確な現場感覚があり、かつて現役のトレーダーであった頃、特に円の短期金利のポジションを取る際に、参考にしてたと言うと若干言い過ぎですが、気にしていました。その時の癖から、今でもタクシーに乗ると必ずと言っていいほど運転手さんと何かしらの会話をします。しかし最近は話す気が失せてしまうこともままあります。先ず行き先を伝えて場所が分からない運転手さんが増えました。「鍛冶橋までお願いします。」「鍛冶橋ってどうやって行きますか?」どうもこうも、皇居の目の前、東京駅の脇であるにも拘わらず、鍛冶橋を知らないとなると流石に閉口します。朝早くテレビ局に行く時にもタクシーを使うのですが、夜中の3時過ぎの首都高速は流石に恐く、シートベルトをしようと思うのですが、今までちゃんと掛けられたことが一度もありません。ストッパーの方が馬鹿になっていて、ベルトが止まらないのです。今まで5台試して5台とも壊れていたので近代化センターは何をしているのだろうと思ってしまいます。まぁしかしイライラしても何にもならないので、なるべくそういう時でも気を取り直して会話を持とうとします。タクシーの運転手さんの態度が大きくなってくると、景気も回復、というのが目下の仮説です。早くそうなって欲しい気もしますし、やはりそれも困る気もしますし、厄介なもんです。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
-
ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。