統計というものは大変興味深く、読みようによっては色々な動きが分かります。私がいつもチェックしているいくつかの統計の中の1つに、国際収支動向(財務省発表)があります。これは毎月発表されるのですが、その中で特に注意してみているのは資本収支です。
5月の資本収支は2兆6千億円の資本流入になっています。これは歴史的に見ると異常なことで、通常は7000億円程度資本流出しているのですが、4月にプラスに転じ、5月にはとうとうこのような膨大な額に達しました。理由は「その他投資」という項目が6兆6千億円の流入になっているからなのですが、これがどうも解せません。証券投資は3兆8千億円の流出、これは積極的な外債購入の為です。その他投資が大きな理由はその外債投資をする為に、銀行などが債券の現先と呼ばれる資金調達をしているせいらしいのですが、外債を購入する結果として統計上資本流入になるというのは変です。
このような状況は、統計上のテクニカルな理由による場合と、実際に何か新たな動きがある場合と、両方あり得ます。厄介なのは、たまに統計のルールが変わって、過去の数字との整合性がなくなることもあることです。今回の現象についてはまだわたし的には解明できていないのですが、いずれ解決したらまた御報告しようと思います。しかし同様のことは企業会計にもあり得ます。ディスクロージャーが極めて需要であること、特に継続性がもっとも重要であることを痛感させられます。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。