日本の多様性のなさは、しばしば指摘されてきました。しかし多様性がないといえば、社会主義国家なども同様です。北朝鮮もキューバも、一般に考えられる多様性のなさに於いては、日本よりも強烈でしょう。しかし日本の方が或る意味に於いてはより多様でないとも言えると思います。単テーマ当たりのGDPといったものを想像してみると、日本は恐らくダントツで世界一でしょう。例えば或るデジカメの人気が出ると、世界一の生産設備を誇る日本の工場に於いても生産が追いつかなくなるほどの需要が起きたりします。或るテレビドラマが流行って、急に或る場所が注目を集め、ヨーロッパの一国の人口ほどの人が一週末に押し寄せたりします。とにかく極端で、ドサーッ、ドサーッと単テーマ毎に巨大なGDPが動きます。この経済的多様性の低さは、ビジネスに効率をもたらす場合もありますが、極端な設備投資などのコストを強いる場合もあります。もっとこの「単テーマ当たりGDP」を減らす努力を我が国はしていくべきだと思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
-
ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。