マーケットのことはマーケットに聞けと言いますが、正にその通りです。一般に連想される結果と、マーケットの反応は違うこともままあります。しかしマーケットの動きにはちゃんと理由があり、それが変わることはありません。一般に流動性に関しては誤解されがちだと思います。例えば手口の非公開化は、まだ時期尚早で証明はされていませんが、恐らく流動性(売買高)の向上に寄与したと思われますが、これも分かりにくい類に入ります(7月3日つぶやき参照)。
空売り規制もその効果について誤解されている、少なくとも誤解している人がいると思います。今日も塩川大臣が、「投機筋がスキを狙っている。空売り規制をもっと考え、信用取引の問題を検討した方がいい。」と発言したそうですが、これも誤解だと思います。空売りをすれば、必ずいつか買い戻しますから、マーケットに対する需給としては中立です。ですから空売りがマーケットを下げることは、マクロ的に考えるとない筈です。一方空売りは流動性をマーケットに供給します。最近の相場が高い売買高に支えられてきたことからも分かるように、流動性にはそれ自体に価値があります。マーケットの仕組みは、ノーベル経済賞の対象にもなる立派な学問です(去年のノーベル経済賞・行動ファイナンス理論など)。この手のことは、マーケットや専門家と対話しながら、慎重に考えていって欲しいと思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。