夕方につぶやきのネタを探してふと窓外を見たら、ガラスの外側に小さなテントウムシが留まっていました。19階、しかも一面ガラス張りのビルでどこも隠れるところがありませんし、東京駅の南側の線路に面していて、ただ無機質な空間が拡がっているだけですからから、虫というか生き物を見たのは初めてでした。ガラスの内側から指を当ててみると、今までは知る由もなかったガラスの厚みが初めて分かりました。2センチはあるでしょうか。映画に出てくる刑務所の面会室のガラスのように、屹然と隔てられているのですが、しかしどこかでコミュニケーションもある気がしました。と、その瞬間、テントウムシは羽を広げて小さな宇宙船のように飛び立っていってしまいました。テントウムシの体長が5ミリほど。私の身長は172センチ。19階の高さが仮に75メートルとすると、テントウムシにとってのこの高さは、私にとっての25キロほどの高さと同じでしょうか。エベレストの3倍の高さまで辿り着いた小さな冒険者との、ほんの一時の、素敵なコンタクトでした。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、その後代表執行役会長。2025年4月より会長(現任)。東京証券取引所の社外取締役を5年間務め、政府のガバナンス改革会議等に参加し、日本の資本市場の改善・改革に積極的に取り組んで来た。ヒューマン・ライツ・ウォッチの副会長を務め、現在は米国マスターカード・インコーポレイテッドの社外取締役。東京大学法学部卒業。