りそなの資本毀損を受けて、金融システムの安定を図る為に、政府は2兆円の公的資金の投入を決定しました。
中途半端でない徹底的な規模は、銀行は潰さない、金融システムは決して不安定にさせない、という政府の決意の表れであり、そのこと自体は高く評価されるべきだと思います。しかし2兆円という規模にはシビレます。いや、本来シビレなければいけないのですが、みんな不感症になってきているのではないでしょうか。赤ん坊も含めて国民一人当たり2万円の負担。イラク戦争が事実上終戦を迎えた段階での戦費とほぼ同額(米政府発表)。世界の第50位程度のGDPと同額(ルクセンブルグのGDPとほぼ同額)。そんな額が、一企業の為に、週末の間に使われる。世界から見ると、今でも日本は黄金の国に見えるでしょうか。
ストックとフロー。日本には巨大な富の蓄積(ストック)があります。それがあるからこのような贅沢な措置も出来ますが、同時にその為に競争原理が衰退し、国力は徐々に下落しています。完全に手遅れになる前にフロー上の競争力を回復しないと、我が国は本当に活気のない、“お茶飲み国家”に成り下がることでしょう。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。