私が証券業界に入った頃は、日本の機関投資家が外債投資を活発にしていく真っ只中で、じきにアメリカの国債の3〜4割を購入するようになる訳ですが、今考えると土地バブルに勝とも劣らない狂乱の時代でした。当時はアメリカで何かしらの経済指標が出るとなると、7時前に一旦オフィスを出て素早く夕飯を済ませ、9時前にはオフィスに戻りNYからの情報を収集して、日本時間の夜9時半に発表される経済指標に備えました(重要な指標の発表は大概アメリカ東部時間の午前8時半、従って日本では午後9時半でした)。
当然お客さん(日本の機関投資家)も、会社に戻って指標の発表と共に動くマーケットでのトレーディングに備えていた訳です。指標が出る、トレーディング・ルームの全ての端末がニュースをフラッシュしながら伝える、速報を伝える音がする、一斉に電話が鳴る、マーケットが動く、全世界のオフィスをリアルタイムで繋ぎっぱなしにしているスピーカーフォンのようなシステムを取引の怒号が駆け飛ぶ。そんな感じでした。
マーケットは、これは債券だったり、為替だったり、遅い時間だと株式だったりする訳ですが、一方向に飛んでそれっきりの場合もありますし、最初の数十秒だけ逆に動くこともあり、或いは行って来いで最終的には元に戻ることもあります。大学を出たばかりの私には刺激的な空間でした。最近は夜間のアメリカの経済指標はあまり縁がなかったのですが、マネックスFXが始まって、また気になり始めました。因みに今晩は、日本時間の夜9時半に4月の消費者物価指数(コンセンサス、マイナス0.1%、食料・エネルギーを除いたコア指数でプラス0.1%)、住宅着工件数(コンセンサス、175万件)が、午後10時45分にミシガン大消費者信頼感指数(コンセンサス、87)が発表されます。
今日の為替はこれらの指標で動くでしょうか?G8財務相会談直前で動きにくいでしょうか?一杯やりながらマネックスFXでも眺めてみようかなと。(あ、これは宣伝ですね。失礼しました)
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。