ヨルダンでの新聞記者による手榴弾爆発事故。なんとも暗い気持ちになります。一般の人が誰でも手榴弾を拾えた訳ではありません。記者であるからこそ、特別な地域に入ることもできたのでしょう。そういう意味で、マスコミには特権があります。その特権によって爆弾を手にし、それが人前で爆発し、死亡者が出た。しかし戦争地域でなくても、似たようなことは日常茶飯事で起きているのではないかと不安になります。
記者は特権により取材し、更に大きな特権によって活字とし、世間にその言葉を出すことができます。週刊誌なども含め、別に物理的な爆弾でなくても、結果的に或る人の社会的生命を絶っていることもあるのでないでしょうか。そのような特権があることの自覚、結果に対する責任感。そういったものが低下しているのではないでしょうか。個人の自由、人権という観点から、この事件は私の心をとても、とても暗くします。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。