我が国の状態を考えてみました。不良債権問題、不景気、構造問題、いろいろな問題が叫ばれますが、街を見るととても綺麗で、安全で、みな平和で豊かに見えます。
「日本の問題」を聞くと、いつ革命が起きても不思議でないようなのに、人々の気持ちは平和で穏やかで、凡そ革命からはもっとも遠い所にある国のように感じます。その雰囲気はまるで大きな、穏やかな、湖面がシーンと安定している湖のようです。しかし湖底を見ると、廃墟があり、グチャグチャに壊れたり汚染されている部分がある。水がたっぷりとある為に、湖底の様子とは関係なく湖面は滑らかなのです。石を投げても一旦は波が立ちますが、暫くするとまた静寂が戻ります。この水は、「裕福」「お金」という水です。水が減って、湖底が現れてこないと、人々の気持ちは変わらないのでしょうか。或いは湖水に強いライトを当てて、中を透かし通して見せれば変わるでしょうか。日本の現状は、滑らかな湖面だけでもなく、醜い湖底だけでもなく、その双方が両立している所に分かりにくさがあるのでしょう。しかしこのままだと水はいずれ涸れます。湖面が低くなってから湖底を掃除すると、湖水は完全に汚染されてしまうでしょう。まだいっぱいの水を湛えているうちに湖底の掃除をすれば、それほど濃く水は汚れないし、仮に濁ってもまた透きます。せめてライトの役割だけでも果たしたいと思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。