ビジネスのこと以外で、最近頭から離れないことが1つあります。大量破壊兵器(WMD)はどこに行ったのだろう。WMDを作っているから、或いは破棄していないから、国連決議1441違反である、というのが開戦の名目だった筈です。しかし今のところWMDは見つかっていません。いずれ発見されるでしょう。変な話ですが、そう願います。しかし市街戦になってまでも使用されなかったということは、本当になかった可能性もあると思います。いや、恐らく隠しているのでしょうが、カリフォルニア州よりも広い国土ですから、しっかり隠されていて、しかも在処を知っている人の数が極めて少ないとすると、見つからない可能性はとても高い気もします。見つからなかったらどうするのでしょう?パウエル長官が国連に提出したWMD疑惑の証拠文書、イラクがニジェールからウランを大量に輸入していた、というものは、何者かが偽造したものであったことが明らかになっています。
しかしそのことはアメリカ国内に於いても、或いは日本のような他国に於いても、それほど注目されていません。イラクの戦後は国連ではなく、「戦勝国」によってその枠組みが決定されていこうとしています。20世紀後半に作られた数々の国家間利害・意見調整の仕組みが機能しなくなってきています。京都議定書の騒動の頃から、雲行きが怪しくなってきました。つい最近でもWTO(旧ガット、世界貿易機関)の交渉が決裂しています。NPT(核拡散防止条約)も破棄されていくでしょう。世界大戦の終結からそろそろ60年。還暦と共に秩序が崩壊していくのでしょうか。新秩序は正義でしょうか?力でしょうか?それとも透明性でしょうか?これらのことが見えにくくなってきています。そんな中で明らかなのはただ1つ、アメリカは戦争をし、勝った。そしてこれからも(もし戦争をすれば)勝ち続けるだろう、ということです。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。