昨日は日本のマスコミについてつぶやきましたが、今日は中国における「報道」について書きたいと思います。イラクのことは、連日CNNなどの映像が、ほぼリアルタイム、無修正で流されていて、街の人も皆よく状況を知っているそうです。イラク戦争自体に対する興味と同時に、無検閲のニュースに対する興奮もあるのでしょう。これは昨日つぶやいた日本のマスコミ報道と同じ状況で、事が事で、戦況の変化も激しいので、一々検閲するのが不可能になってきているのでしょう。
一方SARSについては、驚くべきことに北京では一切報道されていません。これは明らかに情報がコントロールされています。マスクをしているのも旅行者と、ベンツに乗る一部の富裕者層に限られているそうです。情報が与えられていないと、草の根的な原因や対処法の発見も阻害され、問題解決を遅らせます。中国が見落としている重要な問題は、このような情報コントロールをする国に対して、果たして外資が投資を続けるかという懸念です。ようやく中国に対する「見えない」という不安が減ってきて、外資による投資も伸びてきた矢先に、今回の「見せない」という指導部の判断は、投資行動に重大な影を落とす可能性があると思います。
しかしこのことは日本の一部政治家の言動にも正に当て嵌まることです。時価会計と簿価会計の選択性の導入議論。小泉・竹中批判からでた奇策なのでしょうが、こんなものをもし本当に導入したら、日本への投資は更に大きく冷え込むことでしょう。それともわざとそうして円安を発生させて日本経済を立て直そうとする、深い思慮に富んだ奇策中の奇策なのでしょうか?
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。