株安を受け、企業が長期保有する株式について、時価で評価するか取得価格で評価するかを企業に選択可能とさせようという議員立法が計画されているそうです。上場企業が保有する上場株式についてです。なんと評論すべきか言葉を失います。
会計というのは本来、様々な形態の企業がある中で、誰がどの企業を見ても平明に比較できるようにする為、同一の基準をもって企業の財務的実力を評価しようとするものです。日本では「○○社は赤字決算を決断」などという報道がされることがありますが、決算は決められたモノサシを使って企業を測り、淡々とその結果を発表すべきもので、企業が自ら判断し、「決断」すべきものではありません。そもそもこのような報道、またその報道を聞き流してしまう感覚がずれているのですが、今度はなんと21世紀にもなってから、時価評価と簿価評価の選択制を立法しようとのこと、流石に呆れます。
私もこのつぶやきを書く前は「あぁ、またか」などと思っていたのですが、こうして書いていくにつれ、見逃してはいけないという気持ちが強くなってきました。無感覚になっては危険です。安保にしても会計にしても、何事につけても我々はもっと目を醒まして、言うべきことを発言して、然るべき牽制を与えていかなければいけないと思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。