国連安保理は果たして機能したのか?そういった議論をよく聞きます。肯定説、否定説、双方あるようですが、私は国連安保理は十分機能したと考えています。今回のことでも明らかなのは、結局最後は主権国家は自らの決断で実力行使を取り得るということです。これはそもそも、日本がかつて国際連盟を脱退したように、各国は国際連合の脱退も可能な訳ですから、ロジカルには議論を待ちません。しかし今回国連安保理があったが故に、アメリカと仏・露などの主張の対比は、秘密裡ではなく、恐らくテレビを見ている、或いは新聞を読んでいる世界中の人全員の目前に繰り広げられました。
その数たるや10億人を下らないでしょう。地球の運命を左右する重要な事項をこれだけ多くの地球人の前に曝した功績は、計り知れないものがあると思います。そのこと自体に、安保理の直接の作用でなくとも、間接に抑止力があるでしょうし、将来に亘って、多くの人に学習の機会と材料も与えるという、付随する効果もあるでしょう。ですから安保理は機能したと思います。しかしそれ以前の教育とか、コミュニケーションとか、それは安保理の機能の範疇外ですが、そういったところの事前の努力が足りなかったかも知れません。安保理の機能云々を語るよりも、そういった面での国連の今後の役割を検討することが重要だと思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。