本当にきな臭くなってきました。米中央軍の司令官が、イラクの西にあるヨルダンの国王やエジプトの大統領との会談を終え、イラクの南東にあるカタールの前線司令部に昨日到着したそうです。
イラクの北西にあるトルコには、国会が米軍駐留を否決したにも拘らず、米軍が私服で結集を始めたといいます。トルコの更に北西にあるセルビアの首相は昨日暗殺され、国家非常事態宣言が出されました。遥か東方では、北朝鮮が日本を射程に入れる弾道ミサイル「ノドン」の発射準備を進めているような示威行動を見せ、米軍が日本海近辺での警戒を強めているといいます。
イラクとアメリカの問題は、イデオロギーというよりも、憎悪の要素が強く入っているように思われ、これは本当に悲しいことであり、かつ大変厄介な問題です。数十年来なかったような規模で、きな臭さが進行しています。資本市場にはどのような影響があるでしょうか。為替、金利、株価。これは中々難しい問題です。しかし1つ明らかなのは、マーケットのほとんど、いや全ての参加者にとって、これはプロのトレーダーや機関投資家も例外でなく、今回の事態は初めての経験だということです。然しながらそのほとんどの人が、これが全くの未体験ゾーンであり、経験則が必ずしも当て嵌まらないとうことを自覚していないように思われます。為替、金利、株価、全てにおいてボラティリティーは左程上昇していません。官製相場の様相もあり、実際に各マーケット自体は左程激しく変動していないのですが、将来の変動を予想するオプション・マーケットにおいてもボラティリティーは低く推移しています。若いトレーダーが、大したことはないだろうと高をくくるか、或いは何が起き得るか想像もつかなくて、単にレベル感からボラティリティーを売っているのでしょう。ニュー・テリトリーにおいては、最大限の、そしてあらゆる注意が必要で、どんなに用心しても、用心し過ぎることは決してないのですが。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。