ヨーロッパとアジアに跨る国トルコは、世界史の中で常に軍事の要衝でした。かつてコンスタンチノープルと呼ばれた、トルコ最大の都市イスタンブールは、まさに東西文明・文化の交わる場所であり、世界中の多くの人の旅情も誘ってきました。
トルコの外務大臣の話を直接聞いたことがありますが、曰く、「隣人(隣国)は選べない」。まさにトルコの人はそういった感覚を歴史を超えて持ち続けてきたことでしょう。そのトルコが、また世界の注目を集めています。米軍駐留を認めるか否か。これはトルコの人々にとって、極めて重要で、シリアスな判断でしょう。経済的な問題、宗教や哲学の問題、そして自らの生命に関わる問題を含んでいます。主権国家であるトルコの判断を尊重する以外に、我々は何も言えない気がします。
ところで報道によるとムーディーズのトルコ担当アナリストが昨日、電話インタビューに答えて、「米国からの金融支援を得るために、トルコ国会は早急に米軍駐留を認めるべきであり、この支援を受けられなくなると、同社はトルコの格付けを引き下げる可能性がある」と発言したそうです。彼女の発言の背景を私は知りません。トルコのことを常日頃思っている上での発言なのか。もっと淡白な、テレビゲーム的発言なのか。何かしらの圧力があるのか。或いは更に他の理由があるのか。いずれにしても、どこか後味の悪さを感じるのは私だけでしょうか。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。