アメリカは戦争を始めるでしょうか?もちろん私には分かりません。しかし最近のアメリカ側の動きを見ていると、その決意はかなり強そうです。パウエル長官はダボス会議において、「トラスト・イズ・ブロークン」というフレーズを使っています。イラクとの間の信頼関係は壊れた、という意味ですが、ブッシュと違って思慮深く、バランスも取れた慎重派のパウエルが、しかもアメリカ国内ではなく、ヨーロッパや中東からの参加者の多い会議で、しかもその為だけに態々遥か遠方より飛んできてこのようなフレーズを使ったことは、その決意の深さを窺い知る気がします。
トラスト・イズ・ブロークンというのは単にトラストの状態を表した表現であり、最近壊されたとか、回復が難しいとか、他に何か努力しているとか、そのような広がりや可能性を感じさせない冷たさと諦めを感じます。アメリカの議論は、これはサダム・フセインとの問題であり、イラク国民が相手ではない、ということでしょうが、少なくとも最近の調子は「対フセイン」というよりも「対イラク」色が強くなってきており、「米市民と、世界市民と、イラク市民の為に」というのが本来の立場であるべきですが、その3つ目の部分がほとんど欠落してきているように見えます。世界的信頼(コンフィデンス)水準が下がると、やはり株式市場にはきついですね。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
-
ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。