日本は本当に金融危機でしょうか?このあまりにも当たり前で聞き古された問題を今一度考えてみました。日本人が「我が国の金融危機」と言うのを聞くとスムースに耳に入るのですが、外人が「日本の金融危機」と言うのを聞くと、なぜか耳に障りスンナリと入って来ません。何故なら日本では未だに貯蓄率が極端に高く、しかも資本収支も安定していて、要は全体で見ると金融システムは国民から信頼されており、少なくとも他国に迷惑を掛けるような状態では全く無いからです。
しかしここで気を付けなくてはいけないのは、国のレベルではどの国に対しても迷惑を掛けないにしても、或る銀行が或る日突然その機能を停止したりすると、その銀行の取引先である特定の海外企業には多大な迷惑を掛ける可能性があることです。逆の視点で見ると、誰も「日本国」の金融危機(例えばアルゼンチンのような)を心配してはいません。つまり日本の金融問題は、ミクロ的な問題であって、マクロ的な問題ではない訳です。このような切り分けをキチンとすることは、木村剛さんの言う30社問題などと一脈通じるものがあるとも思えるのですが、いろいろなことを一緒くたに議論してしまいがちな日本において、有効で重要なことだと思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。