日銀総裁シリーズ3回目ですが、最後に新総裁のもう1つの要件についてつぶやいて終わりにしたいと思います。5年前にできた新日銀法によると、一旦任命された総裁は健康上の理由など特別なケースを除いて、本人が続ける意思がある間は5年間、総裁の職を解かれません。これは凄いことです。昨日も書いたように新総裁は就任時は政権の意思を強く反映するでしょう。しかし政権は5年間も持たない。新日銀総裁は、これから5年間という、現代経済においては極めて長い期間、その強力な権能を維持することが保証されるのです。その間に間違いも犯すでしょう。世論も、政権も移ろうでしょう。それでも国の為に正しいと思われることを選択し、実行しなければいけない。そしてそれを個人のキャパシティーで行なうことがある程度保証されているということは、逆に言うとそういうことがある程度期待されているということです。現代日本において、これだけの個人としての重責が他にあるでしょうか?新総裁は、極めて高いモラルと強い意志が要求されると思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。