私は星を観るのが好きです。夜空を見上げるのもいいですが、よく撮れた写真を詳しく観察するのもまた一興です。我々の住む銀河系以外の銀河の写真、これは台風のような形をしている訳ですが、を見ると、とっても美しく、またここには生命体があるのだろうか、あるに違いない、などといろいろな想いが巡ります。ところが古今集を読むと、驚くほど星を詠んだ歌がないのに気付きます。私が調べた限りでは三首だけあるのですが、一つは彦星の話(612)、一つは俳諧歌といって「ほし」という言葉をテクニカルにもてあそんだ歌(1029)、一つは天皇を誉め讃えた歌(269)と、まぁ古今集の標準的な水準からいうと凡庸な歌ばかりです。未知と無知は違います。当時はまだ地球が丸いことも知られていなかった時代、星も現世を彩るために天空にちりばめられた飾りのようにしか思われていなかったのでしょう。未知なものには興味が沸きますが、無知は興味も起こさせないということでしょうか。