私は星を観るのが好きです。夜空を見上げるのもいいですが、よく撮れた写真を詳しく観察するのもまた一興です。我々の住む銀河系以外の銀河の写真、これは台風のような形をしている訳ですが、を見ると、とっても美しく、またここには生命体があるのだろうか、あるに違いない、などといろいろな想いが巡ります。ところが古今集を読むと、驚くほど星を詠んだ歌がないのに気付きます。私が調べた限りでは三首だけあるのですが、一つは彦星の話(612)、一つは俳諧歌といって「ほし」という言葉をテクニカルにもてあそんだ歌(1029)、一つは天皇を誉め讃えた歌(269)と、まぁ古今集の標準的な水準からいうと凡庸な歌ばかりです。未知と無知は違います。当時はまだ地球が丸いことも知られていなかった時代、星も現世を彩るために天空にちりばめられた飾りのようにしか思われていなかったのでしょう。未知なものには興味が沸きますが、無知は興味も起こさせないということでしょうか。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、その後代表執行役会長。2025年4月より会長(現任)。東京証券取引所の社外取締役を5年間務め、政府のガバナンス改革会議等に参加し、日本の資本市場の改善・改革に積極的に取り組んで来た。ヒューマン・ライツ・ウォッチの副会長を務め、現在は米国マスターカード・インコーポレイテッドの社外取締役。東京大学法学部卒業。