株式市場が大幅に値を下げています。いろいろな理由があるでしょう。景気に対する懸念でしょうか?しかし経済が悪くなる、悪くなると言われて久しいですが、実はこの数年GDPはさして減少していません。
一方株価はその間に数十%も下げていますから、景気低迷によって株価が下がるというのは感覚ほどには当たっていないように思えます。少なくとも株価の下落ほど経済は縮小していないのは明らかです。ではセンチメントでしょうか?それはあるでしょう。ポジティブな期待感か、ネガティブなそれかで株価は大きく動くものです。しかし今回はそれ以外にも一つ要因があるように思えます。今まで国が関与して問題企業を支援・再建する時には、必ずと言っていいほど株式資本を100%減資しないで、つまり実質上は株主の財産権を含めた全ての権利を残した上で、株式資本よりも優先する地位にある劣後ローンなどを銀行が放棄するような手法が取られてきました。これは以前にも書いたように資本のルールを無視したイレギュラーな行為です。新しい金融相とそのチームは、これらの作業を資本主義の世界標準で行うのではないかという期待、或いは懸念があるのではないでしょうか。つまりまず株式資本を毀損してから、次のステップに移るという方法です。そうすると債務の多い、過小資本の会社の株は売られがちになります。これが理由ではないかも知れませんが、そのような連想がセンチメントにも影響を与えているのではないでしょうか。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。