第2次小泉内閣につき、コメントすべきか否か迷っていました。どのような結果が出るかどうかまだ皆目見当もつきませんし、評価するには時期尚早だと思ったからです。しかし「組閣」という今回の「行為」に限って考えてみました。私は今回の組閣は中々いい出来だと思います。注目すべきはやはり竹中金融相でしょう。私は竹中氏がどのようなアイデアと政治的手腕を持っているかよりも、他の大臣との根本的な立脚基盤の違いに注目しています。竹中さんは国会議員でなく、選挙民のことを気にしないで仕事が出来ます。個人的な人気で大臣になった訳でもないので、パブリックに対してもそれほど視線を気にしないで済むかも知れません。竹中さんは小泉首相によって選ばれた、極論を言うと、小泉首相だけを気にしていれば、小泉政権が続く間は仕事を全うできる大臣です。
日本の政治家を見ていると、総論は改革的な案に同意するものの、各論では選挙などを気にしてしまい歯切れが悪くなるケースがまま見受けられます。竹中さんには理論的にはそれがない。それが最大、且つ極めて希少価値のある特徴だと思います。経済相ではあまり具体的な政策の道具がありませんが、金融相は現実のアクションを伴う職です。せいぜい大胆、迅速に政策を打って頂きたいと思います。萎縮するよりは、突っ走って失敗した方がいいと思います。その方が日本の政治も社会も学習できるからです。この意味で、2002年の日本にとって最も重要な課題であると思われる外交と金融の両大臣が非議員であるというのは興味深いことです。よくよく考えられた策か、無為の策か。いずれ歴史が証明することでしょう。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。