この国は自由経済主義国家というよりも社会主義的色彩が強く、この国の将来のために、そしてそれは即ち当社のビジネスのためにも、なるべく速く直していかなくてはいけないと思っています。勿論我々に出来ることには自ずと限界がありますが、何が問題でどう直していくかについては、常に考察をする必要がありますし、そのような考察する意義も大きいと考えています。
最近マスコミについて考察してみました。我が国の大手新聞は500万から1000万部を毎日売っており、これはファイナンシャルタイムズやニューヨークタイムズなどの10倍くらいの規模です。それだけ大きいとやはり大多数の読者に合わせた記事を中心にする必要が強くなり、敢えて異なる視点を提供するのが難しくなるのではないでしょうか。記者クラブからの記事が、全ての記事の凡そ70%を占めるといいます。しかし一方で週刊誌などを見ると、個人のプライバシーは深く詮索し公表する傾向があります。与えられる情報が画一的であり、一方でプライバシーは守られない。これは体制に対する批判や改革がしにくい仕組みであり、社会主義国家で使われる統治の方法によく似ています。日本の仕組みはこんなところにも問題があります。むしろこの辺りがもっとも根元的な問題なのではないでしょうか。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。