週末に行われたドイツの首相選挙は僅差で与党が勝ちましたが、開票がある程度済んだ時点で野党側も一旦勝利宣言をするなど、かなり微妙な選挙でした。6100万票のうち、9000票しか差がなかったと聞きます。同日にスイスでも同国保有の金の売却益を何に使うかという国民投票が行われたのですが、政府案も野党案も否決されるという結果になりました。
一昨年のアメリカ大統領選で、ブッシュとゴア両候補の得票数があまりにも近く、票を数え直したりで何週間も結果が分からなかったことも記憶に新しいです。しかしこれだけ僅差の全国民参加の選挙が続くのも珍しいのではないでしょうか。それだけ価値観が多様になり、しかしながら同時に価値観の差が微妙な差でしかないのでしょう。しかしこれらの選挙はそういった微妙な差が明らかになって、民主主義がきちんと働いていて羨ましいと思います。スイスの例は国民投票。アメリカの例は事実上の国民投票。ドイツの例も議席数は基本的に得票数に単純比例です。それに比べて日本の選挙システムは、僅かな優位を大きな差として表現してしまうので、現代に於いては改善されるべき点が多いと思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。