日本では何故ベンチャー企業がアメリカのように育たないのか、という問題を語る時、「どうしたら銀行はもっとベンチャー企業に資金供与するのか」とか、「ベンチャー・キャピタルの役割は」とか、そういった金融の問題として捉えられる場合が多いように感じます。しかし私はこの問題は金融機関の問題ではなく、大企業の問題ではないかと考えています。ベンチャー企業の持つ新しい技術とかアイデアをもっとも正確かつ迅速に評価できるのは銀行ではなくて、同じ分野にある大企業ではないでしょうか。評価するリソースも、リスクを知る経験も、その事業を伸ばしていくのにもっとも大切なサポートを供給するネットワークも、それら全て持っているのは大企業です。しかし今まで大企業は新興のベンチャーが現れると、潰すか取り込むかというデジタルな判断をしがちで、例えば49%まで出資してベンチャーの経営権を尊重しながら応援し、共存共栄を図るということをあまりして来なかったのではないでしょうか。こういった所もこれから改善されていくといいと思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。