ひよこは生まれて最初に見たものを親と思い込んでしまいます。これをプリンティング(刷り込み)と言います。卵の殻を割って出てきたアヒルのひなが人間の足を最初に見ると、ちょこちょこといつまでもその足を親鳥と思って追いかけて行くような実験を見られた方も多いのではないでしょうか。
プリンティングは鳥だけでなくて動物全般に存在するのではないかと考えられていますが、人間にもある気がします。私が小学生の頃は「○年生の科学」の実験付録は大人気でしたが、最近はそうでもなく、あの手この手で今風に変えても今一つであったのが、「大人の科学」としてかつて付録を楽しんだ年齢層当てに発売したところ大好評だったそうです。嗜好が年齢に固有ではなく、逆に特定の嗜好が年齢と共にスライドして上がって行くと仮定したマーケティングを「スパイラル・マーケティング」と最近呼ぶそうですが、これは一種の刷り込みでしょう。やはり脳は物理的な構造物なんでしょうね。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。