政策金利は1.25%で据え置き、基調物価は2%目標に整合的な水準へ

賛成8名、反対1名で追加利上げは見送り

日本銀行は、10月29日・30日の金融政策決定会合で、無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.25%程度で推移するよう促すことを決定しました。賛成8名、反対1名での決定となり、9月の利上げに続く追加の引き上げは見送られました。反対票を投じた髙田委員は、基調物価が「物価安定の目標」に達したなか、中立金利に近づけるペースを速める新たな局面に入ったとして、同レートを1.50%程度とする議案を提出しましたが、反対多数で否決されました。

展望レポート:成長率見通しは概ね不変

同時に公表された展望レポートでは、消費者物価指数(除く生鮮食品)の見通しについて、2026年度は前年比+2.5%で据え置かれた一方、2027年度は+2.4%から+2.6%へ0.2ポイント上方修正されました。

また、実質GDP成長率の見通しは、2026年度が+0.6%から+0.7%へ、2027年度が+0.8%から+0.7%へそれぞれ修正され、2028年度は+0.8%で据え置かれました。エネルギー・原材料価格の上昇が企業収益や家計の実質所得を下押しするものの、AI関連需要の増加や政府施策、緩和的な金融環境などが経済を支えるとの見方です。成長率見通しは全体として概ね不変とされ、経済のリスクバランスも概ね上下に均衡していると評価されました。

【図表】2025~2028年度の政策委員の大勢見通し
対前年度比、%。なお<>内は政策委員見通しの中央値。前回時点:2026年7月
出所:日本銀行「経済・物価情勢の展望」よりマネックス証券作成

物価上昇率は2%到達「目標と整合的な水準」

今回、注目されるのは、基調的な物価上昇率が2%の目標と概ね整合的な水準になっていると判断した点です。人手不足のもとで賃金と物価が相互に影響しながら上昇するメカニズムが働いており、中長期の予想物価上昇率も2%程度になっているとしています。そのうえで、従来は物価の下振れリスクに相応の注意を払う必要があったものの、足元では局面が変化しており、基調的な物価上昇率が2%を超えて上振れるリスクに十分留意する必要があるとしました。

保有ETFの売却ペースを引き上げ

また、保有ETFの売却ペースを、2027年1月から年間3300億円程度から8600億円程度へ引き上げることも全員一致で決定しました。いずれも簿価ベースで、新たな売却額は日銀の試算では時価で年間約2兆4600億円となります。これまで売却が市場に大きな影響を与えず円滑に進んでいることや、市場全体の売買代金の拡大を踏まえた判断です。市場の売買代金に占める売却割合は約0.05%から約0.1%へ高まりますが、市場状況に応じて売却額を一時的に調整・停止できる方針は維持されています。

政策金利は据え置かれたものの、日銀は金融環境が引き続き緩和的であると評価し、経済・物価・金融情勢に応じて利上げを継続する方針を示しました。今回の内容からは、2%の物価目標への接近を確認する段階から、2%程度での定着と上振れの抑制を重視する段階へ、政策運営の軸足が移っている様子がうかがえます。

引き続き利上げがメインシナリオ/引き上げペースは速い可能性も

15時30分から開始された植田日銀総裁の記者会見では、従来通り丁寧なコミュニケーションとなりました。

基調的物価が2%の物価安定目標に整合的な水準と判断した理由について、植田総裁は特殊要因を除いたCPIや各主体の予想物価上昇率などの各種指標などを引き合いに出し、複合的な観点からそう判断したとしました。一方で、上振れリスクへの懸念も強調し、先行きにおける政策金利の引き上げも継続していく姿勢がうかがえました。

従来通り、次回利上げの時期については、都度の会合での判断をしていくとしました。今回、筆者が注目したポイントは、基調物価が2%に定着するのを待っているのではなく、都度の状況に対応して金融政策を実施していくと述べられた点です。

政策委員メンバーがデータを重視する姿勢は変わらないと思いますが、政策金利の引き上げの影響を十二分に確認しながら政策決定をしていくといった印象がありました。ここまでの政策金利引き上げを経て、ある程度、それによる経済・物価への影響が見えてきたとも想定されますが、今後は以前よりもスピーディーな判断がされていく可能性があると言えるでしょう。