経済と金融は似て非なるものです。しかしわが国の政治においてはこの二つの差は認識されないでごちゃまぜにされているように見えます。当然経済政策の策定に必要な経験・能力と、金融政策の策定に必要なそれとはやはり似ていても違うものです。
日本の政治において金融は果たしてどれだけ理解されているのでしょうか?さらに興味深いのは経済・金融政策に於ける日米のスタンスの違いです。アメリカに於いては経済全般は基本的に民間に委ねられるべきと考えているのか、一般に金融政策の方に力点が置かれており、金融の分野で諸策を迅速かつ大胆に取ることにより経済活動全般を効率的、間接的にサポート、或いはコントロールしようとしているように見えます。一方日本に於いては経済政策の方が金融政策より上位にあるようですが、電機・カメラ・自動車のように政府が保護政策などを取らなかった業種ほど国際競争力があるのを見ると、やはりアメリカのように経済は民間に任しておいて、まず金融政策を的確に打って欲しいと私は思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
-
ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。